愛犬のしつけに悩む飼い主さんは多いものです。
私も現役の愛犬家として、叱り方で頭を抱えた経験は少なくありません。
まるで会社で部下を指導するようなものだと、しみじみ感じております。
中でも、犬を叱る方法は、愛犬との良好な関係を築く上で非常に大切なポイントになります。
感情的に大声を出したり、ましてや体罰を与えたりすることは厳禁です。
犬の習性を理解し、冷静で統一された態度で、問題行動のその瞬間に対応することが、愛犬を正しく導くための秘訣です。
叱る際の基本的な心構え
大切な家族である愛犬を叱る時、飼い主さんの心構えが何よりも肝心だと、私は考えております。
感情的に怒鳴りつけたり、ましてや体罰を与えたりすることは、愛犬との信頼関係を大きく損なうので、避けるべきです。
冷静で統一された態度
犬を叱る時、飼い主さんの冷静な態度が何よりも重要です。
感情に任せて大声を出したりすると、犬は怯えてしまい、「何が悪いのか」よりも「怖い」という印象が残ってしまいます。
「やれやれ、また飼い主さん、怒鳴ってるよ」と犬に呆れられるのは避けたいものですな。
ご家族で犬を飼っている場合は、全員で叱り方の基準を決めてください。
例えば、「いけないこと」を叱る際は、「ダメ」という短い言葉を使い、落ち着いた低い声で伝えると決めるなどです。
飼い主さん全員が同じ基準で対応すれば、犬も混乱せず、「これがダメなんだな」と理解が深まります。
体罰やマズルコントロールは避ける
体罰や、犬のマズル(鼻から口にかけての部分)を掴んで叱る方法は、決して行ってはいけません。
犬にとっては理不尽な行いであり、体を傷つけるだけでなく、心にも大きな負担を与えてしまいます。
報酬をうまく利用する「モチベーショナルトレーニング」といった方法で、犬に良い行動を促すほうが、お互いハッピーです。
体罰を受けて育った犬は、飼い主さんを恐れるようになります。
そうなると、残念ながら飼い主さんとの間に深い信頼関係を築くのは難しくなってしまうでしょう。
結果として、問題行動の根っこにある原因を探る機会も失ってしまうのです。
犬の習性や反応を理解する
犬を正しく叱るためには、まず犬の習性や感情の反応を理解することが何より大切です。
「犬って、昨日あったことも忘れちゃうんだな」くらいの感覚でいてください。
犬は過去を振り返って反省できません。
だから、問題行動が起きた「その瞬間」に叱らないと、叱る意味が薄れてしまいます。
また、犬が「ごめんなさい」と言っているような、あくびをしたり、目をそらしたり、お腹を見せたりする仕草を見せたら、それ以上は叱らないであげましょう。
愛犬の性格や成長に合わせて対応を柔軟に変えていくことで、より良いしつけにつながります。
適切な叱り方のポイント
犬を叱ることは、愛犬との絆を深める大切な一歩です。
効果的な叱り方を見ていきましょう。
問題行動をした瞬間に叱る
犬を叱るならば、問題を起こしたその瞬間にすべきです。
時間が経ってから叱っても、犬は何で怒られているか理解できません。
過去のことを持ち出しても、犬には伝わらないのです。
例えば、室内で粗相をする姿を目撃したら、低い声で「ダメ」と伝えます。
その場で叱らなければ意味がありません。
短い言葉で低い声を使う
叱る際は、「ダメ」や「イヤ」といった短い言葉を低い声で使うべきです。
長い言葉は犬にとって、何を言われているのか理解しづらいものです。
また、高い声で叱ると、犬は脅威を感じてしまいます。
低い声で落ち着いて伝えるのが効果的です。
叱った後は必ず褒める
叱ったままで終わらせてはなりません。
良い行動を見せたら、必ず褒めてください。
犬は、何が正しい行動で何が良くない行動なのかを認識します。
例えば、室内で粗相をして叱った後、外でトイレを済ませられたら、大げさに褒めてあげましょう。
この繰り返しが、犬の正しい行動を促します。
問題行動別の対処法
ここでは、代表的な問題行動とその詳細な対処法を紹介します。
トイレのしつけ
室内で粗相をしてしまっても、決して叱ってはいけません。
静かに片付けるだけに留めてください。
叱ると、犬は「ここで排泄したから怒られた」と勘違いし、飼い主さんに見つからない場所でこっそり排泄するようになってしまうからです。

我が家の犬は、なかなかトイレの場所を覚えてくれないんですよ

根気強く、正しい場所で褒めるのが肝心です
代わりに、外で排泄できたときには大げさなくらい褒めてあげてください。
そうすれば、犬は「ここがトイレの場所だ」と認識し、次第にそこで排泄するようになります。
外での排泄が習慣になるよう、定期的に散歩へ連れ出すなどの工夫も重要です。
無駄吠えへの対応
要求吠えへの対処は、何よりも反応せず無視することが肝心です。
「吠えちゃダメ」と声をかけるだけでも、犬は「飼い主さんが構ってくれた」と喜び、要求吠えがエスカレートしてしまうケースがほとんどです。

吠えられたら、つい声をかけてしまうんですが…

心を鬼にして無視する勇気も必要です
犬が吠えるのをやめて落ち着いたときに、しっかりと褒めてあげましょう。
これを繰り返すことで、犬は「吠えても意味がない」「静かにしていれば褒められる」と学習します。
運動不足や、退屈でストレスを感じている場合も吠える原因になりますので、散歩の時間を増やしたり、知育玩具を与えたりと、原因に応じた対策を検討してください。
噛み癖への対処
噛み癖をやめさせるには、まず低い声で毅然と「ダメ」と叱り、直後に噛んで良いおもちゃを与えて褒めるのが効果的です。
この流れを徹底すれば、犬は「物を噛むのはダメだけど、このおもちゃなら噛んでいいんだ」と理解し、次第におもちゃを噛むことを習慣にします。

子犬のうちから噛み癖って治せるんでしょうか?

早期からのしつけで十分に改善できますよ
もし噛まれても、大声を出したりせずに無視することも有効な手段です。
大げさに反応すると、犬は「構ってもらえた」と感じ、噛む行為を繰り返してしまうことがあります。
噛まれたらその場を離れて、犬が落ち着くまで様子を見ましょう。
叱らずに予防する工夫
犬のしつけは、問題行動を未然に防ぐ工夫が重要です。
叱る場面を減らせば、愛犬との関係もより良いものになります。
いたずらに耐えられる環境づくり
いたずらを防止するには、犬の手が届かない場所に物を置くといった環境整備が欠かせません。
飼い主が目を離す際は、ケージやサークルを利用して、行動範囲を制限するのも有効でしょう。
犬は短期記憶のため、長時間の留守番は避けたいものです。
飼い主が長期間不在にする場合は、ペットホテルやペットシッターなどのサービス利用もご検討ください。
犬の欲求を満たす工夫
犬の運動不足や退屈は、問題行動の主な原因になり得ます。
十分な散歩や遊びの時間を確保し、愛犬の欲求を満たせば、いたずらを防げます。
しつけや新しいトリックを教えるなど、犬の知的欲求を満たす工夫も効果的です。
飼い主と一緒に楽しめる時間をたくさん作りましょう。
まとめ
犬を適切に叱ることは、しつけの上で非常に重要です。しかし、単に叱るだけでは本質的な改善にはつながりません。犬の習性を理解し、冷静で統一された態度で臨むことが何より大切です。
叱った後は必ず褒めて、何が正しい行動なのかを示すことも忘れずに。問題行動への対処法を覚えつつ、犬の欲求を満たす工夫をすることで、よりスムーズなしつけが可能になるはずです。飼い主の皆様には、犬との信頼関係を深めながら、楽しくしつけに取り組んでいただきたいと思います。











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